私は日ごろ、中小企業の方の法務相談を受けることが多いのですけれども、今回皆さんにお話したいのは、会社の経営、業績等が悪化していったときによくご相談を受ける従業員の賃金を一部減額したいということです。


そういったときに当然何も言わずに行うのは違法になるのですが、会社の方も従業員の方に対して、例えば全員を一堂に集めて、全員といっても20名とか30名の会社が多いわけですけれども、会社の状況説明をして「皆さん、給料減額でいいですか」とそういうことの説明をします。

こういうとき、従業員の方もいきなり言われてなかなか反対の手も上げられず、黙ったままそれでいいということで、給料の減額を実行することが時々あります。

しかし、後日一部の従業員から納得していないということで、前の給料の金額を払えと請求されるケースがあります。

会社側としては、「前に説明したではないか」「反対の手を上げなかったではないか」と言われることがよくあるのですけれども、こういったことは労働基準法や労働契約法の観点から言いますと、従業員の立場からすると自分だけ反対してもほかが同意しているからとか、積極的に反対の手を上げられないことがやはりよくあるのです。

裁判などでは労働者にとって重要な権利利益である賃金、そういったものの減額、これは不利益変更になるわけですけれども、こういった問題については消極的な同意ではなくて、積極的に従業員の方が真摯なる同意をしていない限りは給料減額というのは違法、無効になることが多々あります。

そうなると企業からすると、後日になって差額の請求をされるという、もう払わなくていいと思ったものを払わなくてはいけないといったことになりかねないので、賃金やそういったものの減額を考えている場合には、手続きを丁寧に行う必要があります。

手続きとは従業員に対して会社の現況を説明して、それに対しての同意の機会をその場で求めるだけではなくて、少し時間をおいて真摯な同意が得られるように、かつ、書面できちんともらわなければなりません。そして、さらにはそれを就業規則にも反映させる。

そういったことが必要になってきますので、ぜひそういった点には注意して対応していただくようお願いいたします。

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